結局空き時間は有効活用出来ず、本日最後の授業を迎える事になってしまった。妙に疲れてため息、よろよろと学館に入る。掲示板で教室を確認して階段、入れば友達がもう席をとっていた。
「おかえりー、葉子。…何。何か疲れてんじゃん」
「世界って、いっぱいあるねぇ」
「どうしたの。中二病?」
 最近葉子変よ、と言われて傷つく。恨めしげな目線をつくれば彼女はけらけらと笑った。その隣に腰掛ける。その時、扉があいたのが見えた。現れたのは粗相の彼と、
 雄二。
「席あざーっす!」
「後で何かおごってよねー」
「え、優しくないのな、お前」
 軽い会話をかわして彼等は後ろに座った。私の真後ろには雄二が座る。
「なー、聞いて聞いて。さっきの授業でな、雄二面白かったんだぜ」
「えー、何?」
「寝ててガクってなってた」
「うわ、恥ずかしいやつ、それ」
「疲れてるのかな」
 言葉を受けて雄二がふふふと笑う。だっせぇだっせぇと彼は冷やかす。彼女はにやにやしている。
 私は。
「葉子、どうしたの?」
「あ、うん」
「ほんと、静かだね」
 雄二に声をかけられて思わず体が跳ねる。慌てて振り返れば、不思議そうな顔をした友達、経由してきょとんとしている彼、そして、私を覗きこむ、雄二。
「疲れてる?」
 美しい、声だ。低く澄んでいる。さっきの男の子達とは、違う声。
「入ってきた時しんどそうだったもんねぇ。大丈夫?」
「…うん」
「しんどかったら無理したら、駄目だよ?」
「うん、うん、ありがとう。変に寝たから、ちょっとぼーとしちゃったみたい」
 微笑んでそう言えば納得したように彼女は引っ込む。雄二はまだ私を見ている。居たたまれなくて、少し眼をそむけた。
 何にショックを受けているのか。雄二だって寝ててガタっとかなっちゃうだろうしそんなの分かってる、違う、論点はそこでは、なくて。無いはずで。
 さっきのコンビニの会話が、こびりついて離れない。


  →03